すい臓がんの手術後の食事の注意点

すい臓は体の奥深くにあり、胃や十二指腸、胆のう、脾臓、肝臓、小腸、大腸などに囲まれている臓器です。食べ物の消化を助ける膵液の分泌と、血糖値の調節に関わるホルモンの分泌という2つの重要な役割をもつすい臓もがんになることがあり、すい臓がんの罹患率は60才くらいから増加します。すい臓がんのもっとも効果の高い治療法は手術ですが、食べ物の消化吸収と血糖値の調節に関与するすい臓を摘出した場合、術後にはどのようなことに気をつけたほうがよいのでしょうか? 今回は、術後の食事に焦点を合わせてご紹介しましょう。

すい臓がん手術の切除範囲は?

すい臓がんの手術では、すい臓だけを切除するのでしょうか? がんの位置や広がり具合によって、以下のような切除範囲が選ばれています。

  • 膵頭十二指腸切除(すいとうじゅうにしちょうせつじょ)

膵頭部および周囲のリンパ節、十二指腸、胆管、胆のうを切除します。がんが胃のそばにある場合は胃の一部も、血管に広がっているおそれがある場合には血管の一部も併せて切除することがあります。

  • 膵体尾部切除(すいたいびぶせつじょ)

膵頭部だけを残し、その周囲のリンパ節も切除。一般的には脾臓も併せて切除します。

  • 膵全摘出(すいぜんてきしゅつ)

すい臓全体にがんが広がっている場合は、すい臓全体および十二指腸、胆のう、胆管を切除します。

手術後の食事で注意すべきことは?

手術後は胆汁や膵液といった消化液の分泌量が減少したり、分泌されなくなったりします。胆汁は、脂肪の消化吸収の手助けをしています。また、膵液は消化酵素を含んでおり、食べものの消化吸収を助けます。手術後に胃の働きが悪くなると、胃もたれや食欲減退とともに消化不良を起こしやすくなっていることを念頭においておきましょう。

消化のよいものを少しずつゆっくりと

食べものの消化吸収に時間がかかることを考慮し、消化のよいものを少しずつゆっくりと食べるようにしましょう。また、1回に食べる量を控えめにする代わりに回数を増やす食事法も効果的です。

すい臓の消化酵素を補う膵消化酵素補充薬が処方されているときには、きちんと服用することが大切です。

血糖値の変動をチェックしよう

すい臓は血糖値を調節するホルモンを分泌する臓器でもあります。そのため、すい臓を全切除した場合には血糖値を下げるホルモンであるインスリンの自己注射が必要になります。同時に低血糖状態にもなりやすくなるため、その対策として飴やブドウ糖などを常に携帯しておくことが大切です。低血糖発作を起こすと、下痢、食欲不振、ふるえ、動悸、大量の発汗などの症状がみられ、ひどい場合には意識が遠のくこともあります。毎日きちんと血糖値を測定し、数値の変動を忘れずにチェックするようにしましょう。

その他のポイント

  • 良質なたんぱく質をとるよう心がけましょう。
  • 脂肪分が多い食品は控えめにしましょう。
  • きのこやごぼう、たけのこ、さつまいもなどの不溶性食物繊維が多い食品は避けましょう。
  • 香辛料を使いすぎないようにしましょう。
  • 炭酸飲料、コーヒーや紅茶などは控えるようにしましょう。

具体的には何を食べればいい?

術後には、なるべく体に負担をかけずに体力の回復を促すような食事をとりたいところです。では、具体的にはどのようなものを食べたらよいのでしょうか?

基本はバランスのよい食事です。おかずだけを食べてご飯は残してしまうような食事法は控えましょう。

体をつくるための大切な栄養素であるたんぱく質についても考えてみます。良質なたんぱく質とはどのようなものを指すのでしょうか。

私たちの体を構成するたんぱく質は、20種類あるアミノ酸を組み合わせて成り立っています。アミノ酸のなかには、体内で合成できないために食事によって摂取しなければならない「必須アミノ酸」が11種類もあるのです。この必須アミノ酸がバランスよく含まれているものこそが、良質なたんぱく質といえるでしょう。

必須アミノ酸がほどよく含まれている食品の代表的なものとしては、たまごが挙げられます。

また、白身魚、鶏の胸肉、ささみ、豚フィレ肉などもよいでしょう。

大豆も良質なたんぱく質のひとつで、代表的な大豆食品としては味噌や豆腐、納豆が挙げられます。油揚げや生揚げ、がんもどきなどは、調理前に熱湯で油抜きをするとよいでしょう。また、湯葉やきなこも立派な大豆食品です。さまざまな形で取り入れ、多彩な献立作りに役立てましょう。

食事指導や栄養相談の機会に、自分の病状や体調に合った食材や調理法、献立のアドバイスを受けることもおすすめです。

食欲の変化についても記録しておこう

すい臓がんの手術後、少なくとも5年間は定期的な検査を受ける必要があります。診察の際は黄疸の有無、血糖値やホルモンの状態をはじめ、体調、食欲についても調べられます。痛みや発熱、体調の変化とともに、食欲の度合いについてもメモ程度でよいので記録しておくようにしましょう。


参考: