骨転移を知る

「骨転移」というものをご存じでしょうか。骨転移とは、がんが骨に転移したものを指します。

骨転移自体は命を脅かすようなものではないのですが、骨折や痛み、麻痺などを引き起こすことがあるため、QOL(quality of life 生活の質)を大きく低下させる要因になります。また、骨転移は、根治させることが難しく、うまく付き合うという姿勢で向き合うことが必要です。今回は、骨転移を正しく知り、できるだけQOLを低下させずに骨転移と付き合っていく方法を考えていきましょう。

がんの種類と骨転移の発症

骨転移は基本的にがんの末期に見られることが多いのですが、がんの種類によって骨転移が起きる頻度や時期は異なります。がんのなかでも比較的骨転移を起こしやすいがんには、多発性骨髄腫、肺がん、乳がん、前立腺がんなどが挙げられます。これらのがんでは、がんの早期に骨転移を起こすこともあります。

一方、胃がんや大腸がんなど消化器系のがんや、咽頭がんなど頭頸部のがん、子宮がんなど婦人科系のがんや皮膚がんなどは、早期の骨転移は稀だと言われています。

がんの種類によって骨転移の可能性の高低はあるものの、骨転移の初期症状やその対応などについて知っておくことは、QOLを維持するためにも大切です。

骨転移の症状とは

では、骨転移をするとどのような症状が現れるのでしょうか。

まず、骨転移の症状には大きく分けて痛み、病的骨折、麻痺の3つが挙げられます。これらの症状は、直接命にかかわるものではありませんが、悪化するとQOLを大きく低下させる要因になります。

痛み、病的骨折、麻痺の症状は、骨に転移したがん細胞が、破骨細胞と呼ばれる細胞を刺激することで起こります。

破骨細胞とは骨を構成する細胞のひとつで、正常であれば骨の代謝にかかわり、余分な骨を溶かして、正常な骨組織を維持するという働きをしています。ところが、がん細胞が骨に転移すると、がんによる刺激で活性化し、必要以上に骨を溶かしてしまいます。その結果、痛みを発症したり、もろくなった部分が骨折したり、神経を圧迫して麻痺を引き起こすことになります。

以下に、症状別に詳しく見ていきましょう。

痛み

骨転移による痛みは、正常な骨が破壊される過程で生じます。そのため、転移した初期は「少し違和感がある」というものが多いようです。それが、がんの進行に伴って痛みを感じるようになり、最終的にはほとんどの場合、少し動いただけでも強い痛みを訴えるようになります。

骨転移による痛みはがんの進行に伴うものであるため、安静にしていても徐々に悪化してしまうという特徴があります。もし、無理な体勢をとったり、負担をかけているわけでもないのに徐々に痛みが増している場合は、早めに医師に相談しましょう。

病的骨折

骨転移による骨組織の破壊が進むと、骨がもろくなり、何気ない日常の動作でも骨折することがあります。このような骨折は病的骨折と呼ばれています。通常の骨折であれば、固定し、負担をかけないようにすれば再生しますが、骨転移による病的骨折の場合は、骨のもろくなった部分にがんが存在しているため再生が妨げられてしまいます。骨折を治すためには、手術による骨折の治療と放射線治療などを併用する必要があります。現在では骨折の治療用器具が発達しているため、もともとの強度を取り戻すことも可能です。

麻痺

骨転移が進行すると、最終的には麻痺の症状が現れます。その結果、下半身不随に陥る症例もあります。これは、脊椎に骨転移を起こし、脊髄を損傷することで引き起こされます。脊髄の損傷による麻痺は回復が難しいと言われており、大きくQOLを低下させてしまうことになります。したがって、気になる痛みを感じた段階で医師に相談することが重要です。

骨転移の治療

骨転移に対する治療にはどのようなものがあるのでしょうか。基本的には通常のがん治療と同じく、放射線治療や手術による治療、投薬による治療が行われています。今回は、投薬による治療について見ていきましょう。

使用される薬剤はがん治療と同じく、抗がん剤です。それに加え、骨転移の治療にはゾレドロン酸やデノスマブと呼ばれる薬剤も同時に使用されます。

これらの薬剤は、直接がんを攻撃する抗がん剤ではなく、骨を破壊する破骨細胞の働きを抑えるとともに、新たな破骨細胞が作られるのを抑える薬剤です。

骨転移による痛みや骨折は、破骨細胞の過剰な働きによって起こるため、その働きを抑えることで進行を食い止めようとするものです。

つまり、投薬による骨転移の治療は、抗がん剤でがん細胞そのものの進行を抑えつつ、さらに破骨細胞の働きを抑える薬剤で骨転移による症状を抑えるのです。

まとめ

これまで見てきたとおり、骨転移は直接命に関わる類のがん転移ではありません。ですが、長く痛みが続いたり、骨折や麻痺などを引き起こしたりすることで、QOLを低下させてしまう大きな原因となります。

しかし、早期に発見し治療すれば、進行を抑え、通常の生活を送ることも可能です。気になる痛みや、違和感を感じたら早めに医師に相談しましょう。骨転移と診断されても緩和ケアを併用しながら長く付き合う姿勢で取り組むことが大切です。

参考: