がん療養中の気分がやわらぐセルフケア

新しい薬剤の開発が進み、がんの治療も入院から外来へと場の移行が進んでいます。自宅での療養は、気疲れが少なくなる反面、自分自身で体と心を上手にマネジメントする必要が出てきます。今回は、より良い療養生活を送るために、セルフケアの中でもリラクゼーションをテーマに、だれでも簡単にでき、気分をやわらげる効果があるものをご紹介します。

体をリラックスさせよう

体がくつろぐと、心もくつろぎます。そこで、まずは体をリラックスさせる方法を試してみましょう。

腹式呼吸でリラックス

腹式呼吸というものをご存じですか? 赤ちゃんの頃はみな、腹式呼吸をしているといいます。歌を歌うため、腹式呼吸の練習をした覚えがあるという人もいるでしょう。そう、息を吸うとおなかがふくれる、横隔膜を使った呼吸が腹式呼吸です。

考えてみると、最近は浅くてせわしない呼吸ばかりしていませんか? 意識的に腹式呼吸を行うと、リラクゼーション反応を引き起こすことができるそうです。1日に数回の腹式呼吸で、精神安定作用があるセロトニンの分泌量の増加が見られたという報告もあるとのこと。ぜひ、ゆっくりと腹式呼吸で深呼吸をし、体と心をリラックスさせましょう。

腹式呼吸になじみのない場合には、以下の方法を参考にしてやってみましょう。

  • 仰向けに寝て

仰向けに寝ると、腹式呼吸がしやすい姿勢になります。

足とひざは腰のはばに開き、両ひざをたて、両手はおなかにあてます。息をしっかり吐くと、自然に深く息を吸うことができますので、まず最初は鼻から息を軽く吸いましょう。次に、息をゆっくり吐きながら、背中を床に押し付けるようにします。息を十分に吐いたら、次は、背中を少し床から浮かすようにして息を吸い込みます。腹筋をゆるめる感じでおなかをふくらませると、横隔膜が押し下げられ、息が深く十分に入っていきます。ゆっくり息を吸ったり吐いたり、これを10回くらい繰り返してみてください。

  • 座った姿勢で

床に座った姿勢でも、椅子に座った姿勢でも構いません。仰向けに寝た場合と同様に、最初は息を軽く吸って、ゆっくり十分に息を吐きます。このときに、背中は丸めないようにし、おなかを背中の方へへこませるようなイメージです。息を吸うときには、腹筋をゆるめておなかをふくらませます。みぞおちあたりまで上がっていた横隔膜が下りてくる感じがするでしょう。

食事を工夫して、少しでもおいしく食べよう

食事がおいしく食べられると、体も心もリラックスします。ところが、副作用などで食事がおいしく感じられないことも多々あります。そこで、唾液がよく出ないため口の中が乾燥してしまっているときや、味覚障害が起きているときの食事の工夫について、いくつかアイデアをご紹介します。

  • 口の中が乾燥しているとき

梅干しやレモン、飴などを口にすると、唾液の分泌を促すことができます。

主食として欠かせないごはんは、オリーブ油を入れて炊くと食べやすくなります。通常の分量の水につけた米に、炊く直前にオリーブ油を加えます。米2合に対して、オリーブ油は小さじ2杯ほどでよいでしょう。炊き上がったら、全体を軽く混ぜ合わせましょう。

  • 味覚障害があるとき

食事の前に、炭酸水、レモン水、緑茶などでうがいすると、口の中もさっぱりし、唾液の分泌も促され、味が感じられやすくなります。

味蕾細胞のつくりかえを促すという亜鉛を多く含む食品をとるとよいと言われています。亜鉛の多いものとして、牛肉、鶏肉、豚肉、卵黄、チーズ、レバー、かに缶、うなぎ、牡蠣、玄米、そば、とうもろこし、たけのこ、そら豆などがあげられます。食べられそうなものを、食事に取り入れてみましょう。

心のリラックスのために

兵庫県立大学看護学部、京都大学医学部附属病院、兵庫県立がんセンター、兵庫県立災害医療センターの共同で、通院中のがん患者に対するセルフケア能力の向上をはかるため、グループ支援の方法の開発と効果検証についての報告がなされています。この中にあるプログラムを参考に、心をリラックスさせる方法を考えてみましょう。

感情を外に出してみよう

「イメージ療法」「芸術療法」と呼ばれるものがあります。上記のプログラムで言及されているイメージ療法は、サイモントン療法と呼ばれる療法のガイドラインに沿ったものです。その方法は、くつろいだ状態でがんの細胞をイメージして絵に表し、次にがん細胞が弱っていくイメージや死滅していくイメージを思い描いて絵に表すというものです。また、芸術療法は、音楽と光と絵画を組み合わせたフィーリングアーツを体感し、さまざまな感情を味わうというものです。いずれも、自分の中にある抑圧されていた感情に気づく機会となり、それらを通して自分の解放につながったという報告がなされています。

音楽を聴いたり、映画や舞台を観たりするのもよいでしょう。絵を描く、工作する、音楽を演奏するなどの、自分の体を使って感情を表現する行為は、セルフケア能力の向上により有効なようです。いろいろなことに挑戦し、さまざまな感情を呼び起こして、凝り固まった心をほぐすようにしてください。

他の人と交流しよう

上記のプログラムでは、集団療法によっても情緒状態の改善につながるとの報告がありました。複数人の患者が集まることにより、相互作用によって生まれる高揚感を味わうことができ、それが情緒状態の改善につながったと言います。

ときには患者会に参加するなどして、他の人と交流し、他の人を励ましたり励まされたり、高く評価されてうれしくなったりという高揚した気分をぜひ味わってください。


参考: