なぜがんによって体重が減るのか:がん治療中の栄養を考える

多くのがんでは、病気が進行するにつれ体重減少が見られます。その理由として考えられるのが、がん細胞の増殖によって起こる代謝の変化です。

がんによる代謝の変化が起こると、きちんと栄養を摂取しているのに栄養不足となり、免疫力の低下や、体力不足などを招き、治療が継続できなくなることもあります。がんの進行によってどのような変化が起きるのか、がん細胞はどのように増殖するのかを知り、摂取すべき栄養などを意識してみましょう。

がんはこうやって栄養を確保しています

がん細胞は正常な細胞と違って、無制限に成長を続けます。そのため、大量の栄養を必要とします。そのエネルギーを確保するために、がん細胞は炎症性サイトカインという物質を出します。この物質は、炎症など緊急に対処しないといけない事態が、体内で発症したことを知らせるタンパク質の総称です。体内に緊急事態が起きサイトカインが分泌されると、傷を修復するために血液が呼び集められます。

このシステムを利用してがん細胞は自分のところに血液を集め、その血液から増殖に必要な栄養を取り込みます。

がんの進行による代謝の変化

がんが進行すると、食べているのに痩せるという現象が起こることがあります。これは代謝性の変化が起きて、摂取した栄養が本来使われるべき器官で活用されない状態になっているためです。では、どのような代謝性変化が起きているのでしょうか。

炭水化物代謝

炭水化物は最も基本的なエネルギー源です。その炭水化物は消化分解されてブドウ糖などの単糖類になり、体の機能を維持するためのエネルギーとして活用されます。

正常な細胞では、非常に効率の良い好気性代謝によってブドウ糖からエネルギーを得ています。ところが、がん細胞では好気性代謝を行う機能に異常が生じているため、効率の悪い嫌気性代謝によってエネルギーを得るほかありません。そのために、がん細胞は必要なエネルギーを得るために正常な細胞よりも多くのブドウ糖を必要とします。つまり、がんが増殖すると、大量のブドウ糖ががん細胞によって消費されることになるのです。また、その嫌気性代謝によって乳酸が生成されます。

生成された乳酸を再び活用できるブドウ糖にするために、体のなかでは大量のエネルギーが消費されます。ところが、活用できるブドウ糖に変えても、そのブドウ糖をまたがん細胞が利用することになります。

このように炭水化物から摂取されるブドウ糖はがん細胞によって大量に消費され、体内の乳酸濃度が高まることでさらに多くのエネルギーが消費されるために、体に負担をかけることになるのです。

タンパク質代謝

私たちの体のタンパク質はそのおよそ50%が筋肉です。ところが、がんが進行した状態においては、筋肉は減少する傾向にあります。その原因として考えられているのが、がん細胞によって過剰に炎症性サイトカインが分泌されたことによるタンパク質の分解です。

タンパク質が分解され喪失される量が、タンパク質が合成される量を上回るようになると、免疫反応や消化管機能など多くの身体機能に影響が出るようになります。

脂質代謝

私たちが取り込む栄養素のうち、炭水化物やタンパク質は体内で分解されグルコースやアミノ酸などに変化し、エネルギーとして使われます。また、体内に脂肪の形で蓄えられた栄養分も、同様にグルコースやアミノ酸などに変化し、エネルギーとして使われます。これらの栄養素は、がん細胞にとっても利用しやすいものです。

一方、脂質はグルコースやアミノ酸には変換されません。正常な細胞は脂質を酸化させてエネルギーを得られますが、がん細胞は酸化させるシステムを持たないため、脂質をエネルギー源として活用することが難しいといわれています。

このことから、がん治療中の食事として、がん細胞が利用しやすい炭水化物を控え、利用しにくい脂質を多くとる食事、つまり、高脂肪、低炭水化物の食事をとることが有効なのではないかという仮説を元に研究が進められています。

栄養管理

がん細胞は増殖するために私たちの体に摂取された栄養を利用しています。それならば、増殖に必要な栄養素の摂取を控えようか、と考える人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです。がん細胞がエネルギーとする物質や栄養素は、正常な細胞にとっても必要だからです。

例えば、がん細胞がもっともエネルギー源として活用しやすいブドウ糖は、脳にとっても大切な栄養素です。また、タンパク質や脂質も体を作る基本的な栄養素です。それらを控えてがん細胞の栄養源を絶つことを選んだとすると、体力を維持するエネルギー源を絶つことにもなるのです。

それでは、いったいどうしたらよいのでしょうか? 栄養バランスをとりつつ、高タンパク、高カロリーの食事が体力維持、体重維持には必要なのです。

カロリーアップ

カロリーをアップさせるには、サラダにオリーブオイルを使ったドレッシングを添えるなど、油を使うことを意識するとよいでしょう。ただし、オリーブオイルなどコレステロール値を上げない油を選ぶようにしましょう。

また、魚油に含まれているオメガ3は、がん細胞が転移することを阻害するほか、免疫システムを活性化させると考えられているので、青魚、えごま油、くるみ油なども食事に取り入れるとよいでしょう。

水分補給をする際にも、牛乳や飲むタイプのヨーグルト、フルーツジュース、ポタージュスープなどを積極的に利用すると、カロリーアップにつながります。

タンパク質アップ

肉、魚、豆類を取り入れたメニューにしましょう。そのほか、チーズや卵、ナッツ類なども高タンパクの食品です。毎日、少しずつでも摂取することが大切です。

まとめ

がん細胞が増殖を続けると、体力維持や免疫力維持に使うべき栄養の不足が起こります。高カロリー、高タンパクの食事を心がけ、治療効果が十分得られるだけの体力を維持することを考えましょう。

参考: