がん治療:温熱療法ってなに?

がん治療で主流の治療法として、手術、放射線療法、薬物(化学)療法がよく知られています。しかし、これら以外にもさまざまな治療法が開発され、効果を示すデータが蓄積されつつあります。その中のひとつが温熱療法です。現状では標準治療ではありませんが、多くの症例で選択されている治療方法でもあります。今回は、温熱療法についてご紹介します。治療方法と気になる副作用などについても確認していきましょう。

熱に弱い性質を利用

温熱療法が本格的に研究されはじめたのは、1960年代のことです。それ以前から「丹毒に罹患し高熱を発したがん患者さんのがんが消えた」といった報告がありました。また、1990年頃にはアメリカで、高熱が出る細菌に感染させてがんを治療したと報告されています。

人間の細胞は体温が43度以上になると死滅しはじめます。そこで、正常な組織では温度が高くなると、組織内を流れる血管が拡張して多くの血液が流れるようになります。その結果、多くの血液によって熱が運び出されるので、細胞の温度も上がることはありません。ところが、がん組織は大きくなるにつれ、必要な栄養を取り入れるため急いで血管を作り出します。この新しく作られる新生血管は、正常の血管にように急激な温度変化に対して、拡張して温度を下げることが迅速にできません。つまり、がん病巣の新生血管は温度が高くなっても拡張できず、病巣内の温度が上昇し、がん細胞が死滅しはじめるのです。

がん組織は正常組織より熱に弱いという性質があり、この性質を利用したのが温熱療法です。

治療方法

温熱療法は、通常は40度〜45度程度の温度で行いますが、ラジオ波(RF波)やマイクロ波を利用して、70度以上の高温で治療を行う場合もあります。

また、温熱療法には全身に熱を加えていく全身温熱療法と、がんやその周辺の限られた部分に熱を加える局所温熱療法があります。

基本的には体の外から加温する方法がとられますが、子宮、食道、直腸、胆管など管腔内に専用の器具を入れて熱を加える方法や、がん組織の中に直接、電極針を刺し、加温する方法などもあります。

実際のところ、がん細胞を高温にさらすと死滅するといっても、そう簡単なものではありません。熱が加わると、がん細胞は熱に対抗するためにタンパク質を変化させ、ダメージを受けた細胞を修復しようとします。したがって、繰り返し温熱療法を行うと、がん細胞に熱への耐性ができてしまいます。こうしたがん細胞の変化のことを、温熱耐性を持つと言います。

そのため、温熱療法は期間(通常3日程度)をあけて行われます。一般的には1週間に1~2回、治療が行われることが多いようです。

他の治療法との併用が主流

がん細胞に体の外から熱を加える治療法であるため、比較的体の表面に近いところに発生したがん細胞に対しては、効果的な温度にまで加温することは容易です。しかし、体の奥深くに発症したものや、臓器の中にあるがん細胞については、脂肪や骨、空気などが障害となり、温熱療法の効果が十分に確保できない場合もあります。また、がん細胞に直接、治療のための電極針を刺すことができる部位でない場合は、この方法が選択できません。

現在では、温熱療法は単独で利用されるよりも、放射線療法や薬物療法との併用が一般的です。例えば、食道がん、乳がん、大腸がん、膀胱がん、脳腫瘍などでは、局所温熱療法と放射線療法とを併用した治療が行われています。放射線療法と併用した場合には、放射線療法で懸念される副作用を増悪させないという報告もあります。

副作用

温熱療法による副作用はほとんどないとされていますが、まれに熱を加えた部位のやけど、あるいは痛みなどが起こることがあります。

まとめ

現状では標準治療として認可されていない温熱療法ですが、その効果はさまざまな症例で報告され、研究が進んでいます。現在、特に活用されている形が、放射線療法や薬物療法との併用です。がん細胞に温熱を加えることで死滅させるだけでなく、放射線治療の効果を高めたり、抗がん剤ががん細胞に届きやすくなる、さらには体を温めると免疫力が高まるという効果も期待されています。

温熱療法は、重篤な副作用もないため、うまく活用しながら総合的ながん治療の効果を高める手段のひとつとして、大いに注目されていると言えるでしょう。

温熱療法を試してみたい方は、治療方法を検討する際に担当医に相談してみましょう。

参考: