高齢者のがん治療で考えたいこと

年齢を重ねると、さまざまなところに老化現象が現れます。例えば、傷が治りにくい、気分転換がしにくい、生活環境の変化に対応しにくくなるといったことも、老化に伴う現象だと言えるでしょう。また、若いとき以上に治療中も療養中も介護者の必要性は高くなります。

高齢者のがん治療においては、どのようなことを考えて治療方針を決めるのが良いのでしょうか? また、何を大切に治療を考えていけば良いのでしょうか?

今回は、高齢者が、自分らしい生活を維持しながらがん治療を継続するためのポイントを考えましょう。

高齢者の治療リスク

高齢者のがん治療に関しては、家族も担当医師も消極的になることがあるようです。しかし、高齢者といっても、体力や治療に対する意欲は人によって大きく異なります。

例えば、高齢者本人が積極的な治療を受けたいと望み、肝機能や腎機能が治療に耐えられる状態を維持しており、糖尿病などの合併症がなく、体力にも不安がなければ、十分に治療を行えると判断されます。そして、実際に治療効果も得られています。

一方、若い人に比べて高齢者はがん治療に対して高いリスクを抱えていることも事実です。特に大きなリスクとされているのは次の2つです。

  • 認知症の発症:今までは生活面のことは自分でなんでも対応できていた高齢者が、がん治療で病院に入院したことをきっかけに、認知症を発症することがあります。これは、高齢者になると、急な生活変化に対応しにくくなることと、自分の住み慣れた環境から離れることで疎外感や孤独感が高まり、うつ状態となることで引き起こされるようです。
  • 回復力低下:日常生活においては問題ないくらい体調が整っていても、外科治療後に合併症を発症しやすかったり、放射線治療では体重減少などによって回復が遅れたりすることがあります。薬物治療においては、若い人より骨髄抑制や他の障害が出やすいことも確認されています。

治療方針を決める基準とは

それでは、高齢者ががんだと診断されたとき、何を基準に治療方針を決めれば良いのでしょうか。

平均余命

判断基準のひとつに、平均余命という考え方があります。平均余命というのは厚生労働省が発表した資料をもとにして、平均寿命までの時間がどれくらいあるのかを指します。

がんが進行していくなかで、平均余命に対し、どのくらいの時間で生活の質に影響が出るかを見極める考え方です。

平均余命とがんによる死を迎えるまでの時間バランスを基準に、それぞれの場合でのチェックポイントを考えてみましょう。

平均余命とがんによる死までの時間が同じもしくは短いと判断される場合

例えば、80歳の男性の平均余命は厚生労働省が発表した資料によると8.66年です。その高齢者に早期の前立腺がんが見つかったとします。前立腺がんは進行が比較的遅いため、がんの症状があらわれて、生活の質が悪化するまでの時間は長いと考えられます。

こうした場合には、外科的な手術や放射線治療を選択するよりも、一般的にはホルモン療法などで経過を観察するという治療方針を選択するようです。

がんによる死より平均余命が長いと判断される場合

  1. まず、高齢者機能評価をしてもらうために検査を受け、積極的な治療を受けたいと考えているのかどうかを、担当医師に伝える必要があります。
  2. 体重減少が年にどれくらいあるのかを確認し、栄養状態を判断してもらいましょう。
  3. 現在、治療中あるいは慢性的に持っている病気などの有無を確認しましょう。
  4. 介護を頼める家族などが近くにいるかどうかを考えてみましょう。

こうした条件に問題がなく、自身も積極的な治療を望むのであれば、標準治療などを選択肢として取り入れて、担当医師と治療方針を相談しましょう。

上記の条件がクリアできない状態であれば、例えば、薬物治療の投与量を減らすとか、刺激の弱い薬物に変更するなどの対応策がとれるかどうかを、担当医師とよく相談しましょう。

また、積極的な治療をすると、生活の質が維持できない可能性があると判断される場合には、緩和ケアなど、さまざまな選択肢を視野に入れて考えてみましょう。

まとめ

高齢者であっても若い人であっても、治療方針を選ぶ際には本人の意志が尊重されなくてはなりません。自分はどのように生きたいか、そのためにどのような治療が適切かを担当医師とよく相談する必要があります。

がん治療はがん細胞を攻撃するためのものですが、放射線治療も、薬物治療も外科的治療の手術も、正常な細胞を攻撃することは避けられません。つまり、体力がないと、治療を受けることによってかえって生活の質が維持できなくなる可能性があります。したがって、治療に対応できるかどうかの判断はとても重要です。

高齢者の場合は、それに加え、老化と向き合う必要もあります。治療中に起こるかもしれない体調の変化や、生活環境の変化、生活リズムの変化に、急にはついていけない可能性があることも考慮しておかなければなりません。

まずは自分の気持ち、そして支えてくれる家族の考えと生活条件などを考慮に入れ、担当医師とよく相談しましょう。

参考: