身近な症状 咳について理解しよう!

がんの治療中や療養中は、抵抗力の低下などによって感染症にかかり、咳が出ることがよくあります。受診の際には「咳が出ます」「咳が止まりにくい」と伝えることになると思いますが、「どんな咳ですか?」と担当医に聞かれると、「空咳のような……」や「普通の咳です」などと曖昧に答えていませんか? これでは、咳について明確に説明しているとは言えません。的確な治療を受けるためには、自分の症状を上手に伝える必要があります。

今回は、身近な症状である咳についての知識を確認するとともに、受診の際に咳の様子を正確に伝えるためのポイントについてチェックしましょう。

なぜ咳が出る?

まず最初に、咳はなぜ出るのか、咳の原因、役割とその仕組みを見ていきましょう。

呼吸の際の空気の通り道である気道は、細かい毛(繊毛)と異物を感じ取るセンサー(咳受容体)をもつ粘膜で覆われて保護されています。異物が気道内に入り込んだときには、気道にあるセンサーが異物の存在を察知し、脳幹の延髄にある咳中枢に伝えます。そして、呼吸筋に咳を起こす指令が伝わると、咳が出ます。この仕組みによって気道に入り込んだ異物を排出しているのです。さらに、咳には気道内のほこりや病原体などの異物をからめ取った痰を排泄する働きもあります。

つまり、咳の役割とは空気中に含まれるほこりや病原体、ウイルスなどの異物から身を守るという大切な生体防御にあるのです。

咳は病状を知る手がかり

病状によって咳の性状は異なります。咳の特徴にあわせて考えられる病状をいくつかご紹介しましょう。

咳の症状が続く期間別で見ると

3週間未満のものを急性咳嗽(がいそう)と呼び、主な原因は呼吸器の感染です。その他、うっ血性心不全、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎なども原因として考えられます。

3週間未満の咳であっても注意が必要なのは、転移性肺がんです。転移性肺がんは症状が出にくいのが特徴ですが、ひとつの手がかりとして1週間経過しても軽快せずに悪くなる咳が知られています。この咳の原因は、がんの腫瘍が肺や気管支を刺激するためです。腫瘍が気管支を傷つけるために血痰が出たり、気道をふさいだりするので呼吸するたびにゼーゼーとした喘鳴が現れることもあります。転移性肺がんのリスクが高いものとしては、乳がん、肝臓がん、胃がん、食道がんなどが知られています。そのため、これらのがんの療養中は早期発見のためにも咳の症状に特に注意を払うことが大切です。

8週間以上継続するものを慢性咳嗽と呼び、主に非感染性疾患によって生じます。呼吸器が原因のものでは、肺がん、咳喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎などがあります。他に、胃食道逆流症などがあります。

間質性肺炎は、抗がん剤(ゲフィチニブ、ブレオマイシン)治療の副作用としても知られています。間質性肺炎は、換気を行う肺胞の壁や細い気管支をとりまく間質という組織に炎症が起こることを言います。肺線維症も間質性肺炎の一つです。これは、原因となる薬剤の使用を中止しても肺の繊維化(肺の組織が繊維化して硬くなる)が進行する場合には、治療が難しくなります。そのため、早期発見が重要ですので、咳、呼吸困難、発熱などのかぜ症状に似た症状がある場合には、早めに治療担当医に報告するようにしましょう。

咳の性状別で見ると

痰とともに出る湿性咳嗽は、急性の場合では、気管支炎、副鼻腔炎、細菌性肺炎などが考えられます。慢性の場合には、肺がん、肺水腫、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの可能性があります。

痰の出ない乾燥性咳嗽は、急性の場合には、気胸、過敏性肺炎などが考えられます。慢性の場合には、咳喘息、間質性肺炎、胃食道逆流症などの可能性があります。

自分の咳の状態を観察してみよう!

一言に「咳」と表現しても、咳が出る原因が異なれば、その性状や必要な治療方法も異なります。そのため、自分の咳の特徴をきちんと把握することが、適切な治療をできるだけ早く受けるためにも重要です。そこで、咳の状態の観察ポイントを見てみましょう。

  • 咳の継続期間(日、週など)
  • 咳の出る時間帯(就寝中、明け方など)
  • 咳の性状(連続して出る、2、3回出ると落ち着く、痰のない乾いた咳など)
  • 咳が出るときに感じる自覚症状について(痛み、呼吸困難、痰の有無とその性状など)
  • 咳について日常生活に支障をきたしていること(十分な睡眠がとれない、日常生活動作がつらく感じるなど

以上の点について、日時とともにメモに残しておくと良いでしょう。咳に対して何か対策をとった場合には、例えば、処方薬の服用、水分補給、体を起こすなど、その効果の有無についてもメモしておきましょう。受診の際に、そのメモをもとに説明すると、より正確に咳の症状を伝えることができます。

痰についての注意

咳には、気道内の異物を集めた痰を出す役割もあります。そのため、咳によって痰を十分に排泄することができるかどうかも、治療方針を決定する際の情報になります。痰が出る咳のときには、胸に手を当てて呼吸を繰り返すと、胸部(肺)の奥でごろごろと痰のある感覚を感じ取れることがあります。そのときに、咳をして痰が出ても、手で感じた感覚が変わらない場合には、何らかの理由で痰が十分に排泄できていないことが考えられます。痰が残っていると、十分な換気が難しいため、悪影響が出かねません。そのため、咳と痰以外の自覚症状がなくとも、できるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。

参考: