プラチナ製剤って何?

現在、日本で使われている抗がん剤にはさまざまなものがあります。それらは作用や由来によって区分されています。主なものには、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物アルカロイド、ホルモン療法剤、そして、プラチナ製剤があります。

効果や副作用は薬剤によって異なり、がんの種類や進行状況によって使い方も異なります。

例えば、効果は高いけれど副作用も強く出る薬剤は、長期にわたって使えません。しかし、副作用を恐れて緩やかに反応する薬ばかりを使用していては、期待する治療効果が得られない可能性が出てきます。つまり、単体で使うにせよ、複数の薬を組み合わせて使うにせよ、効果と副作用のバランスを考えながら、最も効果的な使い方を選択することになります。

そこで、治療を受ける側も、使われる薬にはどのような働きがあり、どのように作用するのか。また、そのためにどのような副作用が出やすいのかを理解しておくと、副作用にも備えやすくなります。

今回は、数ある抗がん剤の中からプラチナ製剤に注目し、その特徴と効果、副作用について見ていきましょう。

プラチナ製剤の開発

プラチナ製剤の誕生は偶然の発見によるものでした。1961年に大腸菌が電流によってどのような影響を受けるのかを調べていた研究者が、電極として使っていたプラチナが溶液と反応して、その結果、大腸菌の細胞分裂を止めているのを発見したのです。

その後、プラチナ化合物ががん細胞にも同じような作用をもたらすことが確認されました。こうして開発されたのが「シスプラチン」というプラチナ製剤です。その後、副作用が穏やかで、同じような効果を得られる「カルボプラチン」「オキサリプラチン」などが開発されました。

プラチナ製剤の特徴

効率よくがん細胞のDNAに作用

プラチナ製剤とアルキル化剤の作用は似ています。どちらも遺伝子であるDNAに働きかけてがん細胞を死滅させる効果があります。

細胞が分裂し増殖するためには、遺伝子をコピーする必要があります。もし、遺伝子がうまくコピーできなくなると、細胞は分裂できません。

プラチナ製剤は、体内に入ると活性体となり、がん細胞内のDNAやタンパク質と結合します。プラチナ製剤が変化した活性体に結合したがんのDNAは、正しくコピーできなくなり、その結果、がん細胞の分裂が阻害されるのです。

また、がん細胞のアポトーシス(自死)を促すことも確認されています。

このようにがん細胞の成長に影響を与えるプラチナ製剤は、細胞分裂期に高い効果を示しますが、それ以外の時期でも細胞中のDNAに直接作用するので、より高い効果が期待できます。ただし、効果も高い分、発がん性が認められることもあります。

多くの抗がん剤は、使用継続が長くなると、がん細胞自体が薬剤耐性を持つことがありますが、このプラチナ製剤は、ほかの薬剤耐性を持ったがん細胞にでも効果を示すことがわかっています。

代表的な薬品名と対象となるがん

現在でも、シスプラチンが最も代表的なプラチナ製剤です。その他に、同様の効果があるプラチナ製剤として、カルボプラチンやネダプラチンが挙げられます。また、大腸がんで利用されることが多いオキサリプラチンもあります。

プラチナ製剤は多くのがんが対象となり、高い治療効果を示します。特に、卵巣がんに対する治療効果は注目されています。また、肺がん、子宮がん、腎臓がんなどへの効果も評価されており、他の抗がん剤との組み合わせて使用される抗がん剤です。

強い副作用

プラチナ製剤は高い効果を示しますが、一方で、腎臓の損傷という副作用が強く現れます。ただし、他の抗がん剤で問題となる副作用、骨髄抑制が強く現れることは少ないようです。

その他、耳鳴りや聴覚異常、手足の痺れ、嘔吐や吐き気、末梢神経の障害などが起こりやすいと報告されています。副作用が多いので、投与時には体調をよく観察する必要があります。

副作用を抑えるために工夫されている投与方法

副作用である腎臓の損傷を軽減するためには、水分補給が重要とされています。そこで、投与時には大量の輸液を使うなどの方策がとられています。

例えば、代表的なプラチナ製剤であるシスプラチンの場合は、生理食塩水に混ぜて点滴投与されるのが一般的です。これは、腎臓を保護するための水分を補給すると同時に、食塩水中の塩素がシスプラチンの分解を妨げる作用を持つためです。

まとめ

がん治療において、手術や放射線ががん細胞の周辺に的を絞った局所的な治療であるのに対して、抗がん剤を用いた薬物療法は全身どこに発症したがん細胞にも対応できるのが最大の特徴です。

このため、転移が確認された場合や、転移を予防するためにも広く使用されています。

「より治療効果が高い薬剤を使いたい」、「がん細胞を直接攻撃する薬剤を使いたい」という願いから、プラチナ製剤が開発されてきました。

一方、抗がん剤の使用で気をつけたいのが副作用の強さです。プラチナ製剤はその高い効果と同様に、副作用の強さでも知られている抗がん剤のひとつです。使用する場合には担当医から詳しい説明があり、治療方法に納得してからの投与となりますが、薬の効果と副作用の関係をきちんと理解して、自分でも副作用予防に対応できるようにしておくとよいでしょう。

参考:

薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る|がんになったら手にとるガイド

抗がん剤:プラチナ製剤とは?

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プラチナ製剤の種類と特徴

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