がんの「支持療法」って何?

がんの治療において「支持療法」という言葉を聞くことがあります。治療による副作用を抑えるために大きな役割を果たすのが支持療法です。「支持療法って何だろう?」と思われた方に、がん治療に欠かせない支持療法について詳しくご紹介しましょう。 

支持療法とは

支持療法とは、がんに伴う症状や治療による副作用を軽減する目的で行われる予防策や治療を指します。

特に抗がん剤を用いた治療では、嘔吐や貧血などさまざまな副作用が見られ、副作用の軽減はQOLを維持するためだけではなく、治療を順調に進めるためにも重要となっています。

現在、抗がん剤の副作用を軽減させる方法として2種類の方法がとられていますので、それらについて以下に見てみましょう。

それぞれの副作用を対症療法的に軽減

嘔吐に対する吐き気止め、貧血に対する輸血療法などがこれにあたります。

吐き気、嘔吐

現在では、セロトニン受容体拮抗薬やニューロイキン受容体拮抗薬、ステロイド剤であるデキソメタゾンなど制吐剤には多くの薬剤があります。急性の吐き気や嘔吐だけではなく、遅発性の嘔吐にも効果がある制吐剤も出てきています。

赤血球、血小板

赤血球や血小板の減少に対しては、それぞれ輸血療法が行われます。

白血球数減少

白血球の減少には、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤が投与されることがあります。これは、骨髄を刺激することによって白血球の一種である好中球の増殖を促す薬剤です。

感染症

免疫力が低下している場合には、必要に応じて、予防的に抗生剤が投与されることがあります。感染症が発症した場合には、検査によって病原体が同定され、適切な抗生物質による治療が行われます。

末梢神経障害

しびれ症状などの神経障害の緩和には、ビタミンB6やB12製剤が用いられることがあります。また、痛みに対しては、麻薬性鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤、非ステロイド性抗炎症剤などが用いられています。末梢性神経障害性疼痛薬として承認された薬剤もあります。

投与方法の工夫による軽減

抗がん剤の投与方法を工夫することによっても副作用の軽減が努められています。

クロノテラピー

クロノテラピーは時間治療とも呼ばれています。人間には体内時計があり、体温や血圧など、さまざまな体内の機能が日内リズムを刻むことが知られています。正常な細胞の増殖にも日内リズムがあり、日中は細胞分裂が活発になり夜は沈静化します。それに対して、がん細胞の分裂、増殖は真夜中には盛んになり、日中は低下する傾向があると言われています。この正常細胞とがん細胞の日内リズムの違いを利用した抗がん剤の投与がクロノテラピーです。

クロノテラピーでは、夜中に抗がん剤を投与することによって、正常細胞へのダメージを減らし、副作用を抑えることができます。さらに、副作用を抑制することができるため、より多量の抗がん剤の投与が可能になります。実際に、臨床で高い抗腫瘍効果が得られている方法です。

多剤併用法

治療効果のある抗がん剤が複数ある場合に、特に攻撃メカニズムが異なるものを組み合わせて投与すると、より高い治療効果が期待できます。このように数種類の抗がん剤を組み合わせて治療に用いることを多剤併用法と言います。単独で投与する場合よりも個々の薬剤の投与量を減らすことができる際には、副作用の軽減も期待できます。

生化学的調節法

BCM(Biochemical Modulation)とも呼ばれる生化学的調節法とは、抗がん剤の投与と同時に、または時間をずらして別の薬剤を投与することによって抗がん剤の効果を高めたり副作用を抑えたりする方法をさします。

進行・再発大腸がんの標準治療となっている5-FU/LV療法は、この生化学的調節法の代表例です。5-FU/LV療法では、ロイコボリン(LV)を先に投与しておき、続いてフルオロウラシル(5-FU)を急速投与することによってより高い抗がん作用を得ています。

また、TS-1という薬剤も、体内でフルオロウラシルに変わるテガフール、フルオロウラシルの分解を防ぐギメラシル、フルオロウラシルの毒性を低下させるオテラシルカリウムが配合されたものであり、生化学的調整法を応用したものです。フルオロウラシルの分解が阻害されるため抗腫瘍効果が上がると同時に、オテラシルカリウムによって下痢などの副作用の軽減を狙った抗がん剤です。胃がんをはじめとして、肺がん、大腸がんなど多くのがんで保険が適用になっています。

副作用の症状はがまんせずに伝えよう

副作用の予防と軽減のためには、担当医や看護師からの指導や助言にしたがい、体調や副作用の有無、症状については自分でしっかり把握するようにこころがけましょう。どのような副作用が出ているのか、どの程度であるのかについては、検査ではわからないことも多くあります。したがって、ちょっとした体調の変化やおかしいなと感じたことは、積極的に担当医や看護師に伝えることが大切です。がまんしないで知らせるようにしましょう。


参考: