抗がん剤の種類と特徴「細胞障害性抗がん剤」 について

抗がん剤と一口に言いますが、そこにはさまざまな種類の薬が含まれています。植物由来のものから、性ホルモン、プラチナ化合物、分子標的治療薬まで、その働き方も多岐にわたります。今回は、その中でも「細胞障害性抗がん剤」と呼ばれる薬剤についてご紹介しましょう。 

抗がん剤の種類

現在、抗がん剤の種類はどのくらいあるでしょうか? 銘柄はなんと100種類を超えるとのことです。それらを大きく分類すると、「細胞障害性抗がん剤」「ホルモン剤」「分子標的治療薬」の3つに分けられます。今回は、そのなかでもシスプラチンやイリノテカンが属する「細胞障害性抗がん剤」について詳しく見ていきましょう。

細胞障害性抗がん剤

がん細胞の大きな特徴のひとつに増殖が盛んなことがあげられますが、細胞分裂を阻害することによってがん細胞にダメージを与えるタイプの薬剤が「細胞障害性抗がん剤」にあたります。細胞分裂中の細胞はがん細胞、正常細胞を問わず影響を受けるので、細胞分裂の盛んな組織である口腔粘膜や消化管粘膜、毛根細胞などは薬剤の影響を受けやすく、嘔吐や脱毛などの副作用が多くみられます。薬剤は細胞分裂の阻害の仕方によって、さらにいくつかの種類に分けられています。

アルキル化剤

細胞の遺伝情報を担うDNAにアルキル基を付加することによってDNA合成を阻害し、がん細胞の増殖を止め死滅させます。古くからある抗がん剤であり、起源は第一次世界大戦に用いられたマスタードガスにさかのぼると言われています。

増殖スピードの遅いがんにも有効であり、白血病、悪性リンパ腫などにも効果が認められている薬剤ですが、細胞への攻撃力も強く正常細胞にも影響を及ぼしたり、抗がん剤の中でもっとも副作用が強くあらわれる薬剤でもあります。

  • アルキル化剤の例:

「メルファラン」「シクロホスファミド」「イホスファミド」「ダカルバジン」「ニムスチン」「ブスルファン」

代謝拮抗剤

細胞分裂の際に必要になるDNA合成の材料によく似た物質を細胞に取り込ませ、DNAの合成がうまくいかないようにすることによって分裂を阻害し、がん細胞を死滅させる仕組みの薬剤が「代謝拮抗薬」と呼ばれるタイプの薬剤です。

例えば、「フルオロウラシル」は40年以上も前に開発された抗がん剤ですが、現在でも消化器系のがんなど多くのがん治療に用いられています。

がん細胞がまさに分裂をしている時期に効果があるので、ある程度長期間の投与が必要ですが、副作用は比較的軽いと言われています。現在では、治療効果のために「テガフール・ウラシル」のような体内で長く作用させることができるタイプの薬剤も開発されてきています。

その他、代謝拮抗薬の例としては、「メトトレキサート」「メルカプトプリン」「シタラビン」「ゲムシタビン」などがあげられます。

植物アルカロイド

植物から抽出した毒性の強い成分も抗がん剤として利用されています。「微小管阻害薬」と「トポイソメラーゼ阻害薬」と呼ばれる抗がん剤は、どちらも植物アルカロイドに分類されます。

微小管阻害薬にはビンカアルカロイド系である「ビンクリスチン」「ビンデシン」「ビンブラスチン」や、タキサン系である「パクリタキセル」「ドセタキセル」があります。エポチロン系である「イクサベピロン」もこのタイプになります。ビンカアルカロイド系は、神経障害が特徴的な副作用として知られており、タキサン系ではアレルギー反応が要注意とされています。

トポイソメラーゼ阻害薬には、カンプトテシン誘導体である「イリノテカン」「ノギテカン」、エピポドフィロトキシン系である「エトポシド」などがあります。副作用として骨髄抑制がよく見られることでも知られています。

抗がん性抗生物質

微生物がつくりだす物質の中で、がん細胞に対して用いられる薬剤が「抗がん性抗生物質」と呼ばれているものです。DNAの二重らせん構造の中に入り込んでDNA合成を阻害するものや、DNA合成の酵素の働きを阻害するものなど、薬剤により作用機序は異なります。進行の遅いがんにも効果が高いとされていますが、副作用も強いと言われています。

  • 抗がん性抗生物質の例:

「マイトマイシンC」「ブレオマイシン」「アムルビシン」「ドキソルビシン」「イダルビシン」「ダウノルビシン」

プラチナ製剤(白金製剤)

貴金属で有名なプラチナを利用した抗がん剤です。プラチナにアンモニアや塩素を結合させた化合物が、DNAにくっつくことでDNAの複製を阻害し、がん細胞の分裂を止めるという仕組みになっています。強い効果が期待できる薬剤ですが、副作用が強いことでも知られています。副作用には、嘔吐や吐き気のほか、腎障害、耳鳴り、手足のしびれなども見られます。

  • プラチナ製剤の例:

「シスプラチン」「オキサリプラチン」「カルボプラチン」「ネダプラチン」

薬剤の選択

数多くある抗がん剤から、どのように治療に用いる薬剤が選ばれるのでしょうか? これまでに積み重ねられてきた知見と経験から最適と思われる薬剤が選択されますが、近年は、薬剤感受性試験を事前に行うことも増えてきました。この試験により、実際に抗がん剤を投与する前にその薬剤の効果をある程度予測することができるので、より適切な薬剤を選ぶことができます。現在ではまだ試験結果は絶対的なものではないので、試験方法が改良され、より確かな予想が得られるようになることが望まれています。


参考: