在宅医療のケアポイント:床ずれ予防

がんの治療中や療養生活を自宅でおくる場合でも、患者本人が積極的に体を動かせるなら、生活に必要な作業や身の回りのことを自分ですることで、生活の質、精神的な健康の維持ができます。しかし、どうしてもベッドの上で過ごす時間が長くなり、自力で体を動かすのが難しい場合には、家族やケアスタッフたちが在宅での療養生活を支えることになります。ケアをするにあたり、注意したいことのひとつに床ずれの予防があります。今回は床ずれ予防と在宅ケアのポイントについてご紹介します。

床ずれの原因ってなに?

床ずれ(褥瘡 じょくそう)は、ベッドや布団、いすなどの、身を任せる物体と接触する体の部位において起こる皮膚の外傷です。強い痛みを伴い、その傷みが原因で急激にQOLが低下することもあります。床ずれ発症の具体的な要因を以下に見てみましょう。

  • 体重による圧迫:同じ姿勢のまま長時間、体を動かさずに寝ていると、体の同じ位置に体重がかかり、その部分の血流が悪くなったり、毛細血管が押しつぶされたりして、皮膚組織が壊死してしまいます。一般的に、圧迫する力が毛細血管の内圧(32㎜Hg)を超えて、おおよそ2時間以上が過ぎると、その部位の血行が途絶えて、組織の壊死が始まるとされています。これが床ずれの直接的な要因となります。
  • 皮膚のムレ:日常生活において身の回りのことが自力でできにくくなっている場合、例えば、排便、排尿に介助が必要な場合は、多くの人がおむつなどを利用しています。通気性がよく肌触りが柔らかいおむつが提供されていますが、失禁、発汗などによる皮膚のムレを完全に除くことは困難です。こうした皮膚のムレが繰り返し起こると皮膚自体がただれやすくなり、傷つきやすい状態になります。こうした状態で衣服との摩擦、いすなどとの摩擦、介護する人による圧迫などが繰り返されると、床ずれが発症します。
  • 栄養不良:皮膚の健康を維持するための栄養素、例えばタンパク質、アミノ酸、ビタミンCなどの摂取が不足すると、床ずれができやすくなります。

床ずれを予防するには

床ずれを発症させる要因には、「体重による圧力」「皮膚のムレ」「栄養不足」が考えられます。これらの要因を取り除くことが床ずれを発症させないポイントになります。

体圧を分散させる

自由に体を動かせる場合は、寝ているときも定期的に体を動かしているものです。しかし、寝返りなどが打てない状態になると、介護者が意識的に体位を変える必要があります。2時間に1回は体位を変えるようにしましょう。

床ずれのできやすい部位として、膝、腰、肘、肩、脇の下、後頭部、こめかみ付近といった骨が出ている部位があげられます。したがって、こうした部位に長時間体重がかからないように体位に変える必要があります。体重がかかりやすい部位にクッションを入れたり、体圧を分散させるマットレスなどを使ったり、電動式ベッドを活用することもおすすめです。

皮膚の乾燥を防ぐ保湿ケア

床ずれの予防として体圧の分散と同時に心がけたいのがスキンケアです。スキンケアのひとつとして日常的に行えるのが入浴です。しかし、体力が低下しつつある場合には入浴自体が負担になることもありますので、その際には専門家と相談しながら行うようにしましょう。

入浴時のポイントとしては、皮膚を強くこすらないように洗うこと、刺激の強い洗剤は使わないことがあげられます。入浴後はすばやく皮膚を乾かすことも大切です。濡れたままにしておくと、皮膚がふやけて、床ずれしやすい状態になってしまいます。耳、手足の指の間、脇の下などは見落としがちなので気をつけましょう。皮膚をよく乾かした後は、すぐに保湿剤を薄く塗り、皮膚が乾燥しないようにしましょう。

排泄時にも皮膚の清潔を保ち、乾燥を防ぐことは大切です。トイレットペーパーだけではきれいに拭き取れない場合には、ウエットティッシュのような専用のおしり拭きを活用しましょう。ムレが気になる場合には専用の皮膚保護剤などを利用して、湿ったままの状態が長時間続かないように工夫しましょう。陰部の洗浄は、排泄のたびに行うと皮膚に過度な刺激になる場合もあるので、1日に2回程度が良いとされています。

栄養補給で体力維持

良好な栄養状態は床ずれ防止のためにも重要です。必要なエネルギーの摂取と、タンパク質、ビタミンの補給に気を配りましょう。食べるものに制限がなければ、好きなものを少しずつ、負担のない回数に分けて摂取するのが良いとされています。自力で食事がとりにくい場合には、ゼリーなど半流動食的なメニューを上手く活用しましょう。果物をしぼったジュースや細かく刻んだ野菜のゼリー寄せなど、いろいろ工夫して必要な栄養素がとれるようにしましょう。

まとめ

自分でできる範囲で積極的に体を動かすことも、床ずれ防止になります。例えば、ベッドの上で腕や肘の保湿ケアを自分でするのも良いでしょう。

また、床ずれはいったんできてしまうとなかなか治りにくい症状のひとつです。介護者の負担を増加させないためにも、床ずれの早期発見は大切です。圧迫しても白くならないような紅斑などの皮膚の異常に気がついた場合には、いち早く担当医に相談するようにしましょう。

参考: