喉頭がんの発声障害について

喉頭がんは肺がんと並んで喫煙歴との相関関係が高いとされるがんのひとつです。日本においては女性の発症例が増えていることで注目されており、増加傾向が懸念されているがんでもあります。喉頭がんの治療において、多くの人が不安に思うのが「発声障害」についてでしょう。

今回は、喉頭がんの治療によって起きるかもしれない発声障害について、そして「声を出す」ことができなくなった場合には、どのような方法で「話す」ことを補っていけるのかについて見ていきましょう。

喉頭がんってどんながん?

がんがおもに耳鼻咽喉科が診療する部位(頭頸部)にできた場合、そのがんは頭頸部がんと呼ばれます。その中でも喉頭にできたものを喉頭がんと呼びます。

喉頭は「のどぼとけ」に囲まれた部分で、発声や誤嚥(ごえん)防止のほか、気道確保などの機能を果たしている部位です。喉頭は左右に一つずつ声帯があり、この声帯を振動させることで声を出しています。また、食べ物を飲み込む場合には、ふたの役目をしている喉頭蓋(こうとうがい)が喉頭や声帯を閉じて、食べ物が気管に入り込むのを防いでいるのです。こうした機能を持つ喉頭にがんが発生すると、喉頭が果たしている機能が損なわれることになります。

声を出すための機能

喉頭がんの治療において、多くの人が「声を失うかもしれない」と不安を抱くのは、喉頭が発声機能を担っている部位のひとつだからです。それでは、私たちはどのようにして声を出しているのでしょうか? 一般的には「呼吸器官(気管、気管支、肺)」「発声器官(喉頭)」「構音気管(咽頭、口腔、舌)」の働きによって声を出しています。つまり、上記のいずれかの部位の機能が損なわれる、あるいは器官そのものが失われると声を失う可能性が高くなるのです。

喉頭がんの治療による「失声」

喉頭がんの治療は放射線治療と手術が主流ですが、放射線治療と抗がん剤治療の併用も行われています。近年では、声を出す機能をできるだけ温存する方法が選択されるようになってきていますが、「声を失う可能性」も視野に入れて、早い段階から主治医と治療方法を相談することが大切です。

それでは、喉頭がんの治療によって「声を失う」とはどういう場合に起こるのでしょうか。

  • 一時的に声を失う場合:喉頭は発声器官です。声帯を震わせて声を出しています。その喉頭にがんができた場合、部分的に切除することがあります。こうした場合でも、声帯の一部が残っていれば、手術などによる傷が完治すれば発声できるようになります。つまり、喉頭がんの治療においても部分切除であれば、失声をしても一時的である可能性が大きくなります。
  • 永久的に声を失う場合:咽頭や喉頭にがんができたことによって、喉頭を全部摘出するような場合には、喉頭が担っていた発声機能は失われます。そして、声を出すことはできなくなります。

声を失った場合に「話す」ことを補う方法

喉頭がんの治療において、一時的に声を失った場合は、やがて傷が回復すれば話すことは可能になります。それまでの一時的な意思伝達の方法として、多くの人が利用するのが筆談です。簡単な会話なら、表情や身振り手振りでも十分に意思疎通を図ることは可能です。

それでは、永久的に声を失った場合はどうでしょう。この場合でも、筆談や身振り手振りは有効な意思疎通方法です。そのほかに、手話を活用する人もいます。また、器械を使って発声する方法や、食道を利用して発声する方法などもあります。

電気発声

これは器械を使って声を出す方法です。小型マイク状の器械を、片手で押さえるなどして、首の皮膚に密着させて装着します。それが電気喉頭としての役目を果たすのです。電気喉頭を電気的に振るわせながら発声どおりに口を動かすと声が出る装置です。最初は思うとおりの発声ができないこともあるようですが、しばらく練習すると振動のさせ方、口の開け方などのコツがつかめて、うまく声が出せるようになります。誰にでも使えるのが電気喉頭の利点とも言えます。

電気喉頭は日本喉摘者団体連合会などで購入できるほか、担当医に相談すると購入方法なども教えてもらえます。

食道発声

これは食道を喉頭の代わりに利用して声を出す方法です。食道や胃に空気を吸い込む、あるいは飲み込むようにして、その空気をはき出すときに、食道粘膜あるいは咽頭を振るわせて音を出します。

食道発声は、電気発声とは違い、独学や短期間の練習でコツをつかむということができません。発声教室などに通い、声を出す方法を体得する必要があります。

体得期間の目安ですが、最低限の会話ができるようになるまでに、早い人で2週間程度、平均的には6カ月程度必要とされています。また、雑音が入ったり、息が途切れると声も途切れたりするので、苦しそうに見えるなど、デメリットを感じる人もいるようです。しかし、肉声での会話ができること、器械を持ち歩かなくてもいつでも会話ができるようになることなど多くのメリットもあります。

発声教室は全国に50カ所以上が開講しており、専門家にアドバイスをもらいながら意思伝達、会話方法について学べるほか、声を失った人との情報交換ができる場にもなっています。

各地にある発声教室については、日本喉摘者団体連合会で情報提供しています。

まとめ

喉頭がんの治療において多くの人が不安に思う「発声障害」ですが、最近の傾向として発声機能を可能な限り残すことが検討されています。また、声をなくしたとしても、会話、意思伝達方法はいろいろあります。自分に適した方法を見つけるためにも、治療開始段階から主治医とよく相談するようにしましょう。

参考: