抗がん剤が効きやすいがん、効きにくいがんってあるの?

抗がん剤治療は、がんの三大治療法のひとつですが、がんになったら誰でも抗がん剤による治療を受けることになるのでしょうか? 抗がん剤はどんながんにも効くのでしょうか? がんの種類によって、効果が出やすいがん、効果が出にくいがんというものはないのでしょうか? 今回はそのような抗がん剤についての疑問にお答えすべく、その治療効果に焦点をあててご紹介します。

歴史は浅くとも効果的な治療法

抗がん剤による治療はいつごろ始まったかご存知ですか? がん治療の歴史をひもとくと、三大治療法のうち、外科療法(手術療法)が最も早くから行われています。また、放射線療法による最初のがんの根治例は1899年に報告されているそうです。それに対して、薬剤ががんの治療に使われ始めたのは1940年代になってからのことです。そして、1950~60年代に、現在も使われている抗がん剤が出そろいました。

外科療法も放射線療法も局所的な治療法であるのに対し、抗がん剤は全身にその効果を発揮します。そのため全身に広がったがんに対する効果的な治療法となり、抗がん剤の登場によって進行がんへの延命効果も期待できるようになりました。現在では、歴史は浅いですが、がんに対する強力な治療法としてその地位を確立しています。

抗がん剤のはたらき

正常な細胞が、何かの原因によってその性質が変わってしまい、どんどん増殖するようになるのががん細胞です。細胞が分裂し増殖していくためには、細胞の中にある遺伝情報を担ったDNAと呼ばれるものも複製しなければなりません。抗がん剤の多くは、DNA合成を阻害するはたらきがあり、細胞の分裂と増殖を繰り返すがん細胞を攻撃します。分裂と増殖がさかんな血液や毛根の細胞も、がん細胞と同様に抗がん剤の影響を受けやすいので、抗がん剤治療によって脱毛や貧血といった副作用が生じてくるのです。

抗がん剤の効果はがんの種類によって違う

抗がん剤はどのようながんに対しても効果的に攻撃できるのかといえば、実は、がんの種類によって効き方は異なります。抗がん剤がどのくらい効くかは薬剤感受性と呼ばれる、抗がん剤に対する感受性の高さによって異なります。そして、薬剤感受性によってがんは「よく効く」「比較的よく効く」「あまり効かない」「ほとんど効かない」の4つに分けられています。どのようながんがどこに分類されているのか、以下に例をあげましたが、分類は絶対的なものではないことにご注意ください。薬剤感受性は、がんの進行度合いや、がんの組織分類の違い、個人差によっても大きく変わります。また、大腸がんのように、今まではあまり効果がなくとも新薬の登場で効果が上がっているものもあり、今後も分類はどんどん変わっていく可能性があります。

抗がん剤がよく効くがん

抗がん剤による治癒および延命効果が期待できるがんには、以下のようなものがあります。

急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(中高悪性度・悪性リンパ腫)、肺細胞腫瘍、絨毛がん

抗がん剤が比較的よく効くがん

治癒についてはあまり期待できないものの、延命効果が期待できるがんには、以下のようなものがあります。

乳がん、卵巣がん、小細胞肺がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(低悪性度・悪性リンパ腫)、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、大腸がん

抗がん剤があまり効かないがん

抗がん剤によって症状の緩和は期待でき、無治療よりは延命効果が期待できるがんとして、以下のようなものがあげられます。

軟部組織腫瘍、頭頸部がん、食道がん、子宮がん、非小細胞肺がん、胃がん、膀胱がん、肝臓がん、前立腺がん、脳腫瘍、すい臓がん、腎臓がん

抗がん剤がほとんど効かないがん

抗がん剤による治癒および延命の効果がほとんど期待できないとされているがんには、以下のようなものがあげられます。

悪性黒色腫、甲状腺がん

日進月歩で進むがん治療

現在の薬剤感受性の分類で見ると、抗がん剤のみで治癒効果が期待できるのは、血液のがんなどに限られているようです。しかし、抗がん剤と外科療法や放射線療法などの他の治療法を組み合わせると、治癒や延命効果が期待できる場合もあります。

外科療法との併用では、手術前に抗がん剤を投与する治療も10年くらい前から行われています。抗がん剤の投与によってがんの病巣を小さくし、手術による切除範囲を小さくするという方法です。たとえば、乳がんの場合には、乳房を温存することができるなどの効果があります。

また、食道がんのように、抗がん剤療法と放射線療法の組み合わせによって外科療法に匹敵する治療効果が得られている場合もあります。手術によって食道のみならず胃まで切らないといけないことがある外科療法に比べ、抗がん剤と放射線の併用療法の非侵襲性は、治療後のQOLを考えた場合に大きなメリットがあると考えられています。

抗がん剤は、脱毛などさまざまな副作用を引き起こすことでも知られていますが、現在では副作用を軽減する方法も研究が進んでいます。また、新薬の開発もさかんであり、新しいタイプの薬が開発されると治療効果も向上するでしょう。また、三大治療法以外の治療法も開発されてきており、それらとの組み合わせにより新たな展望が開ける可能性もあります。一昔前には恐れられたがんですが、これからはよりいっそう「治る病」となっていくでしょう。


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