腸内バクテリアが、がんの化学療法の助っ人に?!

腸内には多くのバクテリアが棲みついていますが、これらが私達の健康に極めて重要な役割を果たしていることをご存知でしょうか。アメリカの神経生理学者のマイケル・D・ガーション医学博士は、脳にある神経伝達物資セロトニンが腸にあることを発見して『セカンド・ブレイン-腸にも脳がある!」という本を出版しています。また、医学界では、「最大の免疫器官は腸」とも言われています。
最近では2013年11月に、フランスにあるがん専門機関(Institut Gustave Roussy,Inserm, Institut Pasteur,the French National Agronomic Research Institute)の研究チームは、化学療法に使われる薬と腸内バクテリアの相互作用が、抗がん免疫システムを活性化させるという結果を発表しました。
「化学療法」と腸内のバクテリアの関連性は、世界の医学界でも新しい発見です。果たして、どのように腸内バクテリアが作用するのかを紹介しましょう。

腸のバクテリアの働きとは?

まず初めに、腸内のバクテリアの働きを挙げてみると、食べ物を消化するばかりでなく、必須の栄養の吸収、新陳代謝、有害物質の除去、また病原体から体を保護するなどがあります。
腸内には、100~120兆個、100~300種類ものバクテリアが生息しています。同じ種類のバクテリア同士が群生して棲み分けをしていて、群れごとに集まって腸内に定着していていることから「腸内細菌蓑」または「腸内フローラ」と呼ばれています。
私達が生まれたときからすでに体内にある「腸内フローラ」は、免疫システムにも大きな役割を果たしています。「腸内フローラ」は人によってさまざまですが、今回の研究では、「腸内フローラ」の中の一つあるいはいくつかの種のバクテリアの存在の有無によって、がんなどの病気を引き起こす可能性が示唆されました。

化学療法にどう腸のバクテリアが関係するのか?

今回の研究結果は、化学療法に使われる薬と腸内バクテリアの関係について、新たな見解が得られました。
がん治療の化学療法に最も幅広く使われているシクロホスファミドと呼ばれる薬は、免疫を抑制することで、がんを抑える効果があります。一方、薬の作用で免疫力を抑えるので、腸内フローラのバランスが乱れる副作用があります。
ところが、フランスの研究チームが発見した結果は、シクロホスファミドによる化学療法の実施下において、副作用で増えた悪玉菌を退治しようと活性化した、あるバクテリアの免疫反応が、がん抑制につながるはたらきをするという内容でした。つまり、薬の副作用で起きた予想外の免疫反応の連鎖が、抗がんに良い効果をもたらしたという喜ばしい発見でした。

今後の課題

シクロホスファミドにおいて、抗がん免疫システムに作用するのは、数百種類もあるバクテリアのうちある一定のものだけです。同研究所の次なるステップは、免疫の活性化でがん抑制を助けるバクテリアを、食事改善やプロバイオティクスの活用などで、どう増やしていくかということです。
元来、腸のバクテリアは、免疫力や自然治癒力を高めたり、抗生物質による副作用を抑える力があることもわかっています。今回の結果は、化学療法下での腸バクテリアの作用でしたが、優れものの腸バクテリアに関しては、今後のさらなる研究に期待が寄せられます。