緑茶で胃がんは予防できる?

昔から「百薬の長」と親しまれ、日本人の生活に深く根づいてきた緑茶。緑茶には胃がんを予防する効果があると考えられていましたが、逆に胃がんのリスクが高まるという調査結果もあり、緑茶と胃がん発症の関係に注目が集まっています。

はたして、緑茶で胃がんを予防できるのでしょうか。日本で行われた疫学調査の結果をもとに、緑茶とのつき合い方について考えていきましょう。

緑茶をよく飲む女性は胃がんのリスクが低下

緑茶と胃がんの発症リスクについて、現在までにさまざまな研究が行われています。

厚生労働省の研究班が1990年代から2000年代まで実施した、約9万人の男女を対象とした疫学調査の結果によると、1日5杯以上緑茶を飲む女性で胃がんのリスクが3割抑えられることが明らかになっています。さらに胃の下部に限定した場合、1日1杯未満の人と比較すると、リスクが半分になることがわかりました。

また、約4万人を追跡調査し、調査期間中に胃がんを発症した人としなかった人を同数加えた988人を対象とした症例対照研究も行われました。その結果、女性においては、緑茶ポリフェノールのカテキンの一種「エピカテキン3ガレート(ECG)」の血中濃度が高いと、胃がんのリスクが7割以上抑えられることが明らかになっています。一方、男性にはこのような関係は認められず、カテキンの一種である「エピガロカテキン(EGC)」の血中濃度が高いと、逆に胃がんのリスクが高まる結果になりました。

喫煙習慣と緑茶の関係

さらに、喫煙状態別に緑茶ポリフェノール濃度と胃がんのリスクの関係を調べたところ、非喫煙者では濃度が高くなるにつれて胃がんのリスクが低くなるのに対し、喫煙者では逆にリスクが高まることが明らかになりました。とくにECGにおいては、顕著なリスクの上昇がみられています。

この結果から、喫煙者にとって緑茶は胃がんのリスクを高める飲み物だと思われるかもしれません。しかし、そもそもの原因は喫煙習慣にあります。実際、たばこをやめた人(過去喫煙者)では、緑茶ポリフェノール濃度が高くても胃がんのリスクは上昇していないという結果が出ています。胃がんのリスクと緑茶の関係を考えるうえでは、まずはたばこをやめることが前提になるでしょう。

男性に予防効果がみられないのはなぜ?

さまざまな研究結果から、緑茶をよく飲む女性には予防効果がみられるのに対し、よく飲む男性ではリスクが高めになる傾向がみられます。なぜこのような男女差が出てくるのでしょうか。

原因のひとつに、依然として中高年男性の喫煙率が高いことがあげられます。先に述べた、EGC濃度が高い男性にリスクが上昇した研究結果も、喫煙率が低い女性との差が出た可能性があります。

また、「ヘリコバクターピロリ菌」の影響も無視できない要因です。ピロリ菌の陽性率に男女差は認められていませんが、飲酒や喫煙などの生活習慣が加わって、胃がんの発症率を高めていると考えられています。

さらに、男性は熱い飲み物、食べ物を好む傾向があると考えられ、熱い飲み物が胃の上部のがん発症のリスクを高めていることも示唆されています。緑茶を飲むときには、カテキンがよく抽出されるよう80度くらいでいれ、少し冷ますのがよいでしょう。

まとめ

日本人女性では、緑茶を飲むことで胃がんのリスクを下げる可能性がみられますが、男性においては喫煙や飲酒などの生活習慣が影響し、はっきりとした予防効果はみられていません。緑茶と胃がんのリスクの関係については、現在もさまざまな議論が続けられており、今後のさらなる研究が期待されるところです。