がん幹細胞って何?

最近よく耳にする「がん幹細胞」という言葉。これからのがん治療において、大きなカギを握る存在と言われています。そもそも、がん幹細胞とは何なのか、そしてどんな治療方法が期待できるのか、詳しくご紹介していきましょう。

がん細胞の製造工場「がん幹細胞」

がん幹細胞は、いわゆるがんの製造工場です。従来がんは、がん細胞が「分裂」を繰り返してがんが増えると考えられていました。ところが、がん細胞のなかには、失われた細胞を生み出す幹細胞のように、「補充」してがんをつくる能力をもった細胞も存在することが明らかになってきました。

実はこの性質に、がん治療を困難にする理由が隠れています。

抗がん剤が効かない理由

三大治療のひとつ「抗がん剤」は、とくに手術や放射線治療で太刀打ちできない、全身に転移したがんに有効な治療方法です。血液を通して全身に薬をいきわたらせ、がんを攻撃していきます。

これらの抗がん剤は、がんが細胞分裂するときに働きかけ、細胞の増殖を妨げるものです。

ところが、がん幹細胞は普段はじっとおとなしくしている細胞なので、いつ活動を始めるのか予測がつきません。つまり、攻撃できるタイミングが非常に難しいのです。

実際、抗がん剤治療でなくなったかのようにみえたがんが、しばらくしてから再発してしまうというケースでは、密かに生き残ったがん幹細胞が新たながん細胞を生み出し、再発を引き起こしていると考えられています。

がん幹細胞が再発リスクを高める?

このように、抗がん剤が効きにくく、活動の予測がつかないがん幹細胞ですが、さらに厄介な性質をもっています。それは、環境の変化に非常に強く、いろんな場所で生存できることです。
他の場所に移動して再びがん細胞を生み出し、新たにがんを作っていく…つまり、がんの再発リスクを高める存在なのです。

従来の抗がん剤治療は、増殖の高いがん細胞そのものをターゲットとしたものでしたが、親玉の存在が明らかになったことにより、がん幹細胞に照準を当てた研究が世界中で進められています。

最新の研究成果

2008年には、慶応大学の佐谷秀行教授が、がん幹細胞を作り出すことに成功しています。最近では、リウマチ治療に使われている薬をがん幹細胞に応用する臨床研究を行っており、がん幹細胞を抑制する作用が確認されています。

九州大学の中山敬一教授は、がん幹細胞の静止期に着目。じっとしている理由を解明することで、従来の治療法が有効に働くのではと考えました。研究の結果、がん幹細胞に静止を働きかけている原因が、細胞周期を調節する「Fbxw7」という遺伝子にあることを発見。マウスを用いた実験により、この遺伝子の働きを抑制することで抗がん剤の効果が上がることが明らかになっています。

また、最近では、岡山大学を中心とする研究グループが、がん幹細胞から生まれる細胞が幹細胞自身を養うことを世界で初めて証明しました。これは、女王蜂のように、子が親を養う社会性ががん細胞にも存在していることを示すものです。互いに依存関係にあることが明らかになったことにより、新たな観点から治療法が開発されることが期待されます。

まとめ

最近の研究によって、複雑な仕組みが次々と明らかになっている、がん幹細胞。
文部科学省の「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」においては、がん幹細胞研究領域チームが設置され、医薬品開発へとつなげるべく日々研究が進められており、今後さらなる期待がよせられるところです。